はじめまして。ソーシャルサービスの会です |
さて、今回は近年アメリカで老後を過ごそうか・・・?とお考えの稲門会の方が増えてきていらっしゃるので、「年金」、「医療保険」と「遺言」の3つについて、簡単にご説明します。
年金:ソーシャルセキュリティー、401K、IRA国民年金、厚生年金
引退後の生活を支える大事な収入源、「年金」。働いていたときに納めた「ソーシャルセキュリティー」や「国民年金」「厚生年金」は、2005年に「日米社会保障協定」が結ばれたことにより、日米両方の年金が合算されて受け取れるようになりました。
<ソーシャルセキュリティーとは>
「ソーシャルセキュリティー(Social Security)」とは公的年金のことで、「ソーシャルセキュリティーナンバー(Social Security Number)」とは納税者番号のことです。一般的には、定年によってソーシャルセキュリティーを受け取るためには(支給有資格者となるには)、10年間の就労年間、または40ポイントが必要とされています。
<企業年金・個人年金>
アメリカでは公的年金(ソーシャルセキュリティー)のほか、企業年金(401(k)プラン)と、個人年金(IRA:個人退職積立勘定)があります。企業年金・個人年金とも、個人(年金を受給する本人)がリスクを負い、年金積立金を管理・運用する点が共通です。詳細については、企業年金ならびに個人年金を取り扱っている事業者(銀行、保険会社など)にお問い合わせ下さい。
<日本の年金>
日本で国民年金・厚生年金に加入されている、もしくはされていた方は、アメリカにおいても年金を受給することが出来ます。
アメリカに住みながら日本の年金を受給するには、日本の社会保険事務所に申請をしなければなりません。その際、届け出なければならない書類の参考(個々のケースにより、異なります)は以下になります。
①裁定請求書(社会保険事務所にあります)
②戸籍謄本
③住民票謄本(家族全員の続柄が記載されているもの)
④預金通帳
⑤印鑑
⑥海外に居住していた期間を証明する書類(領事館発行の在留証明書、パスポートなど)
日本での勤務先を何回か変わられた方は、年金の申請のために揃える書類がさまざまで手続きが煩雑となります。ご注意ください。
<リンク>
ソーシャルセキュリティーオンライン
http://www.ssa.gov
厚生労働省:年金情報のページ
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/nenkin/nenkin/shogaikoku-us.html
All About:海外で暮らす、帰国したときの年金知識
http://allabout.co.jp/finance/nenkin/subject/msub_e.htm
日本大使館(The Japanese Americans’ Care Fund):退職年金について、その他
http://www.us.emb-japan.go.jp/j/html/genchi/us_ssn_retired.htm
医療保険:メディケア、メディケイド、民間の健康保険
アメリカには国民皆保険制度がありません。そのため、医療費は基本的には全額自己負担をするか、個人もしくは勤務先を通じて民間の医療保険に加入し、保険でカバーすることになっています。
例外として、65歳以上の高齢者、身体障害者、慢性腎不全患者を対象としたメディケア、低所得者を対象としたメディケイドの2つの保険が連邦政府または州政府によって提供されています。
<メディケアとは>
メディケアは、高齢者(65歳以上)と身体障害者(年齢不問)、慢性腎不全患者(透析か腎臓移植を必要としている人、年齢不問)を対象とした医療保険で、連邦政府が管轄しています。メディケアを受給するには、メディケアタックス/ソーシャルセキュリティーを10年以上納めていなければなりません。
メディケアにはパートA、パートB、パートDなど、様々な部類に分かれています。パートAは「入院に関わる費用(ベット代、治療費など)、ナーシングケア(養護、長期的介護を除く)、一部の在宅ケアなど」をカバーし、保険費は無料です。パートBは「外来に関わる費用(診察代、検査費、セラピー、一部の在宅ケア)など」をカバーし、保険費は一ヶ月$93.50(2007年)です。これはソーシャルセキュリティーから引き落としがされます。パートDは「処方箋薬(Brand & Generic)」をカバーします。パートDは民間の保険会社やNPO(AARPなど)や州政府(ニューヨーク州:EPIC)などがプランを提供しており、自分でプランを選び、保険費(一ヶ月平均15~30ドル程度、薬代は別)を払います。
メディケア
http://www.medicare.gov
日本大使館(The Japanese Americans’ Care Fund):メディケアの概要、その他
http://www.embjapan.org/j/html/genchi/us_ssn_medicare.htm
外務省:海外在住者と日本の医療保険、年金
http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/kaigai/nenkin_hoken/index.html
<メディケイドとは>
メディケイドは一定収入以下の方のための医療保険で、州が行っているプログラムです。受給資格があるのは、①アメリカ市民、②グリーンカード保持者、③5年以上アメリカに合法的に滞在しているビザホルダーです。また、緊急時にはステータスに関わらずメディケイドを申請できるシステムを用意している州もあります(Emergency Medicaidと呼ばれます)。詳しくはお住まいの州のウェブサイトをご参照下さい。
*Emergency Medicaidは誰もが必ず受けられるわけではありません。Emergency Medicaidをあてにして手術や治療を受けたけれども、Medicaidがおりず、多額の医療費を負債として抱えたケースが報告されています。ご注意ください。
<民間の医療保険>
アメリカの場合、低所得者、身体障害者などや65歳以上の高齢者を除き、公的な医療保険は存在しません。そのため、個人は民間の医療保険に加入することになります。
加入の方法としては、①勤務先を通じて医療保険に加入する方法、②個人で加入する方法、の2つに分かれます。勤務先を通じて加入する場合、保険会社やカバー率については、勤務先にお問い合わせ下さい。
個人で加入をされる方は、加入の前に以下の点について確認をしてください。
①保険会社の名前、連絡先、担当者
②何をカバーするか(外来、検査、入院、看護、処方箋薬、看護・介護機器、リハビリテーション、その他)
③いくらまでカバーするか(例:処方箋薬は3000ドルまで、など)
④どこの病院、医師で使えるか
⑤どこの州で使えるか(居住している州以外で使えるか)
⑥海外(日本など)で使えるか
⑦料金(保険費とコペイ)
法律関係:遺言(Will)、リビングウィル、ヘルスプロキシー、永住権保持者の税金
このブログで紹介する情報は、あくまでも基本的なもので、州により、また個々のケースにより、対応策が違ってきます。インターネットやお知り合いの方から得た情報だけで早合点をせず、弁護士や税理士といった専門家に、ご自身のケースについてご相談ください。
<遺言(Will)>
遺言とは、ご自身が死亡した場合に、不動産、銀行預金、株といった「財産」を誰が受け取るかを書面によって宣言するものです。「遺言」がなくても、共同名義の財産や受取人のいる財産(生命保険、年金プラン、信託銀行口座など)は自動的に家族の残されますが、それ以外のものについては、遺言状がない場合、州の法定相続(Intestacy Statute)によって分配されることになります。基本的には個人との続柄が近い順に相続することになりますが、州の法律、財産の種類などによって異なるのでご注意ください。
以下、米国における遺産相続について簡単にまとめます。しかし、これはあくまでも基本的な情報で、州により、またケースにより異なることがあります。必ず税理士や弁護士といった専門家にご相談ください。
遺言を用意して死亡した場合:遺言執行人(Executor)が遺言とその他の書類を地域の遺言検認裁判所(Surrogate CourtまたはProbate Court)に提出し、遺言が有効かどうかの判断をあおぎます。適切に作成されていれば、分配が行われます。
遺言を用意せずに死亡した場合:遺言検認裁判所が遺された財産の管理を行う相続代理人を指名し、その後、州法に基づいて相続人(配偶者と子供などの直系の家族)を特定、遺産の分配を行います。そのため、通常手続きが完了するまでに時間がかかります。配偶者が急に死亡した際、財産の全てが死亡者の名義となっていた場合、残された配偶者は手続きが完了するまで不動産を売ったり、預金をおろすことはできません。
残された配偶者がアメリカ市民の場合:配偶者控除により、無制限の金額が無税(州の遺産税や相続税の課税が生じることがある)です。
配偶者が永住権の場合:無制限の配偶者控除は受けられませんが、「制限付家庭内信託(Qualified Domestic Trust)」を組み、遺産の一部を信託として配偶者に一定の収入をあたえていく形にしておくことで、無税で遺産を受け取れます(注:QDTを組んでも、100万ドルを超える相続に関しては、超えた分が連邦遺産税がかかります)。
<リビング ウィル(Living Will)>
遺言の作成時に、ぜひ一緒に準備をしていただきたいのがリビングウィルです。というのも、致命的な病気や怪我などで昏睡状態になったり、脳死になった場合、医師は万が一の訴訟を避けるため、また、医師としての役割を果たすため、生命を維持するための処置(人工呼吸器や経管栄養など)を行います。延命措置や入院費は、短い期間であれば保険でカバーされますが、長期にわたると莫大な医療費がかかり、財産を圧迫してしまいます。そのため、ご自身の命の尊厳を守るため、治療の制限を宣言しておくのがリビングウィルです。リビングウィルにサインをした場合、医師は合法的に人工呼吸器、栄養補習、水分補習などの人工的延命措置を切り、自然に死を待つ状態(尊厳死)にします。
NY州 バーアソシエーション(ニューヨークリビングウィル):
http://www.nysba.org/Content/NavigationMenu/Public_Resources/Programs_and_Resources/Living_Will_Proxy_Forms/English_version.htm
<ヘルスケア プロキシー(Health Care Proxy)>
致命的な病気や怪我、一時的な意識不明、精神の混乱などで治療に対して自分の意思を伝えられない場合、医療上の決定権をご家族や親しい友人の方に与える委任状です。医師をはじめ、医療機関は委任状を与えられた方の指示に従い、治療の決定を行います。
ニューヨーク州ではフォームが作成されておりますので、ぜひそれをご活用ください。
http://www.health.state.ny.us/nysdoh/hospital/healthcareproxy/1430.pdf
ニュージャージー州でも、ヘルスケア プロキシーのサンプルを用意しています。
http://www.state.nj.us/health/ltc/advance_directives.pdf
<永住権保持者の税金>
永住権保持者は、市民同様、全世界に持っている財産(不動産、株、預貯金など)に対し、課税されます。また、永住権を保持したまま日本に帰国しても、税法上はアメリカ居住者のため、全所得が課税対象となりますが、「海外役務所得控除(8万ドルまで)」や「外国税額控除」を適用することで、税金を最小限に抑えることができます。
永住権保持者が長くアメリカを離れた後、再入国許可証を取得したとしても、連邦税の申告書を提出していない場合には永住者としての権利を放棄したとみなされる場合があります。ご注意ください。
アメリカ生活に関わる機関・団体のリンク集
在ニューヨーク日本国総領事館:http://www.ny.us.emb-japan.go.jp/jp/html/index.html
ニューヨーク日系人会:http://www.jaany.org
邦人・日系人高齢者問題協議会:http://www.agingjaa.org
日米ソーシャルサービス(JASSI):http://www.jassi.org
ニューヨーク州:http://www.ny.gov
ニューヨーク市: http://www.nyc.gov
ニュージャージー州:http://www.state.nj.us
ソーシャルセキュリティーオンライン:http://www.sso.gov
メディケア:http://www.medicare.gov
外務省:http://www.mofa.go.jp
厚生労働省:http://www.mhlw.go.jp
社会保険庁:http://www.sia.go.jp